自宅録音:どんな予算でもパーフェクトなスタジオ環境を整える方法について考えよう
そろそろ宅録スタジオのセットアップを完璧にしたい…
と思っていたところではありませんか?とは言えこの場合「完璧」っていう意味は、あくまで皆さんそれぞれの状況において完璧なものということでお話しないと意味がありませんよね。つまり楽器や機材、使える予算、その他あなたが要望する条件にあったパーフェクトなものということです。
当たり前のことですが、高望みすればそりゃ呆れるぐらい金がかかります。なのでまずは基本から揃えていきましょう。あなた自身のニーズとスキルが上がっていくにつれて自宅録音スタジオも徐々に構築していくというやり方こそ現実的かつ最適な方法です。
今回このガイドは、あなたのニーズに合った最適な宅録機材をチョイスするのに役立つはずです。以下のカテゴリーから自分に合致する条件のものを参考にしてくださいね。
- 初心者—始めたばかり、または始める算段をしているところ
- 中級者—もう1ランク上の環境にしたいなという時期に来ている
- プロ級—これで生計を立てている
- 超プロ級—最高級の機材に投資しようと考えている
さて、準備はいかが?それでは行きますよ!
1. コンピュータとデジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW)
あなたがこの記事を読んでいるということは、すでにコンピュータをお持ちなはず、ですよね?
では確認すべきは「このパソコンはDAWを使用した時のCPU負荷に対して必要十分な速さと安定性を保持するだけのスペックを持ち合わせているか?」ということです。もしそうでなければCPUのアップグレードが不可欠です。
新たにパソコンを導入しようという場合は、HDD式(ハードディスクドライブ)ではなく、SSD式(ソリッドステートドライブ)の機種を選んでください。SSD式の方が高価ですが、より速く、より静かで、より信頼出来るという点で、レコーディングソフトを駆動させるのに適しています。
さて、コンピュータの方の準備が出来たら、今度はDAWを何にするか選びましょう。
アコースティック楽器を録音するか、はたまた音の制作はコンピュータのみでやるのかの如何にかかわらず、どちらにしてもアレンジや編集、ミックスやバウンスといった制作物のマスタリングのためにレコーディングソフトが必要となります。
あなたに最適なソフトを選ぶために、私たちが作成した完全版DAW DAWガイドを参考にしてください。
2. ヘッドフォン
さて、コンピュータとDAWが揃ったら、お次は「ヘッドフォン」です。
なんでここでヘッドフォンなのかって?なぜならヘッドフォン選びこそ音楽制作やミキシング作業を始めるにあたって重要な意味を持つからです。
- そもそも音楽制作のためにあつらえたわけではない普通の部屋・・・ですよね?
- ルームメイトや隣近所に対して騒音の問題を気にしないわけにはいかない・・・ですよね?
- ということはいいモニタースピーカーを導入して揃えるという時期ではまだない・・・ですよね?
いや、仮に音響や防音を整えた部屋でモニタースピーカーを鳴らせる環境になったとしても、モニター用のヘッドフォンは必要不可欠なアイテムであることに変わりありません。
つまり宅録スタジオの環境がどのレベルであれ、最初に行うべき価値のある投資はヘッドフォンということになるのです。
その見るからに付属品とかによくありがちなステレオ・イヤフォンにはもうおさらばしましょう。
必要なのは耳全体を覆うオーバー・イヤー・タイプのヘッドフォンです。
オーバー・イヤー・タイプのヘッドフォンは大きく分けて2種類あります。
密閉型ヘッドフォンはレコーディング時に外部の音を遮断し、ヘッドフォンからの音漏れも防いでくれますが、音質的にはやや劣ります。開放型ヘッドフォンの方が音質的に優れていますがその分若干高価であり、また外部雑音のない静かな環境での使用が求められます。
私たちのオーディオ担当チームによる比較調査の結果からおすすめの機種はこちら:
- 初心者向け:Audio-Technica ATH-M40x(密閉型)
- 中級者向け:AKG K240 MKII(密閉型)
- プロ向け:Beyerdynamic DT 770 250 ohm(密閉型)もしくはSennheiser HD 600(開放型)
- 超プロの方:Sennheiser HD 800(開放型)
購入時のポイント:販売店に行く際、お気に入りの曲が入ったスマートフォンやMP3プレイヤーを持参し、購入前にヘッドフォンを試させてもらいましょう。同じ曲を同じ音量でいくつかヘッドフォンを試し比較検討してください。あるいはいっそのことあなたが手掛けたマスター音源を持っていくのがいいかもしれません。
3. オーディオ・インターフェイス
オーディオ・インターフェイスとは、楽器やマイクをコンピュータに接続するための機材です。
この機材を介すことによってマイクの信号やライン信号といった様々な音声信号をDAWに送り込みコンピュータ上で録音することが可能になるわけです。
オーディオ・インターフェイスとMacまたはPCへの接続は、USBやFireWire、Thunderbolt等を経由して行います。通常は簡易なドライバーソフトをインストールしてコンピュータに接続したインターフェイスを認識させる必要がありますが、それさえ済めばすぐに使用可能になります。
宅録に最適なオーディオ・インターフェイスを選ぼうという際に、取っ掛かりとしては「2イン/2アウト」のモデルを選ぶのがポイントです。
1つの端子でXLRと標準フォーンのどちらかをお好みで接続出来るこのコンボ・ジャック方式は、多くのインターフェイスで採用されています。TRS(標準ステレオフォーンプラグ)、TS(標準モノラルフォーンプラグ)、XLRプラグといった仕様のケーブルであればどれも利用可能なので助かりますよね。
コネクターのことについて詳しく知りたいという方はこちらのオーディオ・ケーブル・ガイドをご参照ください。
オーディオ・インターフェイスの価格はまちまちですが、その差というのは一般的に内部のプリアンプとコンバータの質の差によるものだと考えていいと思います。
おすすめ機種:
- 初心者向け:PreSonus AudioBoxもしくは Focusrite Scarlet 2i2
- 中級者向け:Audient iD14もしくは Apogee Duet (ただしこちらはMacまたはiOSのみ対応)
- プロ向け:Apollo Twin
- 超プロの方:: Apogee Quartetまたは Apogee Symphony
購入時のポイント:オーディオ・インターフェイスによっては無料のDAWソフト(簡易版的なもの)が付属している場合もあります。これはこれでお金の節約になりますし、もしあなたが初心者でDAWとインターフェイス両方必要だというのであれば、この手のコンボ・パックで始めるのはいいかもしれません。
4. アクセサリー関係:ケーブル、スタンド、ラックなど
作業に付随する小物や部材、周辺機具といったアクセサリー関係もスタジオには必要不可欠ですよね。
中でも明らかに最も重要なものといえばオーディオ・ケーブルです。これが無ければ何も始められないし、音の行き場もないわけですからね。必要必須なケーブルを用意しておくことはサウンドのアイディアを素早く書きとめるための鍵でもあるのです。
スタジオ作業で必要な基本的なケーブルは、
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- XLRケーブル~マイクやバランス信号の接続
- 標準モノラルフォーンケーブル~ギターやエフェクトペダルといったアンバランス信号の接続
- 標準ステレオフォーンケーブル~バランス信号出しが出来るシンセやドラムマシンなどの接続
- MIDIケーブル~MIDI信号でシンクさせる全ての機材の接続
その他揃えておきたいもの:
- マイク・スタンド
- ポップ・フィルター(ボーカル録りに)
- キーボード・スタンド
- 機材用ツアーケース(外での演奏があるなら)
- 高品質なヘッドフォン用延長ケーブル(モガミのゴールド・シリーズのような)
- 電源タップ
- 疲れない椅子
5. マイク
ボーカル録り、またはマイク録りが必要な楽器の録音となれば当然ながら相応の良いマイクを揃える必要があります。
しかし一口にマイクといってもその種類やタイプには様々な違いがあります。
それでは基本から入りましょうか。
まずあなたが出くわすのは「ダイナミック」と「コンデンサー」という主たる2つのタイプのマイクの違いです。
ダイナミック・マイクとは何か?
ダイナミック・マイクはマジで頑丈なヤツで、例えばビール蒸留釜みたいなものが盛大にガーン!とか落っこちてきたとしてもその衝撃に耐えるんじゃないかというほどです(やや言い過ぎ)。
その丈夫さ故にステージ・マイクとしてあらゆる現場で使用されているのです。このタイプは通常電源供給は必要ありません。XLRプラグのケーブルで接続すればそれでもうOKです。
許容周波数レスポンスなどといったスペック上の数値はありますが、それほど厳密に気にしなければならないものでもありません。
ライブ時のボーカル、ドラム、大音量で鳴らすギターアンプ等の音を狙うのに向くのがこのダイナミック・マイクです。
コンデンサー・マイクとは何か?
コンデンサー・マイクはダイナミック・マイクより高感度で高出力です。より優れた周波数特性と音抜けの良さが特徴です。すなわちどんな帯域の音もよく捉え、とりわけ高域特性に優れていることを意味します。
コンデンサー・マイクはスタジオ向きのマイクと言っていいでしょう。ダイナミック・マイクと比べたら壊れやすく、大きな音に対し繊細かつ敏感です。そして使用する際は電源供給または「ファンタム電源」が必要となります。
一般的に内蔵するダイアフラム(振動板)のサイズの違いによってその用途も分類されます。
大きいダイアフラムを持つマイクは低域特性に優れているのでチェロやボーカルなどに用います。小さいダイアフラムのものは伝達スピードが速く高域特性を必要とするもの、例えばフルートのソロやアコースティック・ギターなどに用います。
ステップ別のおすすめ:
- 初心者向け:Shure SM58(ダイナミック)もしくは Audio-Technica AT2020(コンデンサー)
- 中級者向け:RØDE NT2-A(コンデンサー)
- プロ向け:Neumann TLM 102(コンデンサー)
- 超プロの方:AKG C414(コンデンサー)
ポイント:あなたがエンジニアとして駆け出しの新人であろうと、もはや伝説の人物であろうと、ライブにおける古典的かつ普遍的な価値をもつマイクはShure SM58であることに変わりありません。ほぼ全ての会場・施設がこのマイクを常備していると言っても過言ではありません。SM58を持つことは常に賢明な投資なのです。
6. MIDIキーボード/コントローラー
DAWを用いて音楽制作する際、結局のところ誰もが必要となるのがMIDIコントローラーです。
DAWソフトウェアは、お気に入りのVSTプラグインやソフトウェアシンセをMIDIキーボードを駆使してツマミをいじり、フェーダーに触れ、それらをコントロールすることによって命を吹き込んでいくようなものですからね。
つまりMIDIコントローラーというのはDAWシステムにおける楽しいハードウェア・バージョンにあたるわけです。
是非こちらの「ベストMIDIキーボード・コントローラー・ガイド」をチェックしてみてください。
7. パワード・モニター
さてさて、ヘッドフォンの先のステップに進む準備が出来たあなた。ヘッドフォンは便利でいいんだけれど、作業が何時間も続くとなるとすぐに耳が疲れますよね。それに一般リスナーのことを考えても、全員が全員普段ヘッドフォンで音楽を聴いているわけではないよねっていうのも実はミソでして。
音楽を聴く環境としてあらゆる再生装置を用いてより良いサウンドになっているか確認することはミックス作業ではとても重要なのです。
ではスタジオ・モニターを導入する時期ですね。パワード・モニターならスピーカーを駆動させるための外付けアンプは必要ありません。今や宅録スタジオでは定番の機材となっています。
ところでいわゆるコンポ等の一般的なスピーカーとモニタースピーカーとでは一体何が違うのでしょうか?
一般的なスピーカーは音楽の聴こえ方が心地よくなるようにあらかじめ特定の方向性でチューニングされている場合がほとんどです。そして多くの場合、低音域帯はブースト傾向にあります。つまり再生された音はスピーカーによってかなり色付けされているということですね。
片やスタジオ・モニターというのはよりフラットな特性を持っています。つまりミックス作業の際、音のバランスを色づけなく正確に聴くことが出来るのです。音楽制作、ミックス作業に真剣に取り組む上で、スタジオ・モニターはマスト・アイテムなのです。
人気の高いモニターの機種:
- 初心者向け:M-Audio AV42 またはPreSonus Eris E5
- 中級者向け:KRK Rokit 5
- プロ向け:Adam A5X
- 超プロの方:Genelec 8030B
ではどうやって自分用のスタジオ・モニターを選べばよいのでしょうか?
一番ベストなのは、可能な限りあらゆる機種が試聴出来る販売店に行って試すことです。この場合もスマホやMP3プレイヤーを持参して自分がよく知っている曲を流して確認することをお忘れなく。
ステレオで配置された2つのモニタースピーカーのセンターにおいて耳の高さとスピーカーの位置を合わせてください。
そしてあなたの頭部とモニタースピーカーのそれぞれを頂点とした正三角形になるようにポジションをとってください(下図参照)。これが最適なモニター配置です。
さあ、あなたが持参した曲を流してみましょう。同じ曲を同じ音量で違うモニターで聴き比べたらそのサウンドはどう違って聴こえるのか比較確認してみましょう。あなたが持っているその曲のイメージに最も近いサウンドで鳴ってくれるものを最終的に選択すればよいのです。
良いモニターのサウンドは実にフラットで、再生してくれるのはありのままのローエンドとクリアなハイエンドです。しかし当然ながら「部屋」自体の環境もそのサウンドの聴こえ方に影響を及ぼすということもお忘れなく。次のステップは吸音・防音といったスタジオ・ルームの音響処理ということになるでしょうね。
さて、もしあなたがより下腹部に響くようなサウンドを望むなら(そして隣人を気にせずに済むのなら)サブ・ウーファーを導入するのもありです。
500USドル以下で買えるもの:
8. 音楽制作に関する書籍
最後になりますが、機材や設備面の事を語るのではなく、あえて提案したいのが文献に触れることです。
てか、まずは取説もちゃんと読みましょうね(苦笑)
何か特定のやり方について悩んだりしたとき、参考に出来る文献・テキストがあるのはとても心強い味方となります。
これらの本はとても詳細に語られていてあなたのスキルを磨くことにもきっと役立つことでしょう。
音楽制作に関するおすすめ書籍:
- Home Recording For Musicians For Dummies by Jeff Strong
- The Audio Expert by Ethan Winter
- The Studio SOS Book: Solutions and Techniques for the Project Recording Studio by Paul White, Hugh Robjohns and Dave Lockwood
- The Mixing Engineer’s Handbook by Bobby Owsinsk
そしてもちろん、私たちはこのブログコーナーを通じて皆さんが欲しいと思う情報を提供出来るようにこれからも頑張っていきますよ!よかったらニュースレターの登録をお願いしますね。*このページを下の方にスクロールしていくと出てきます
あなたの「完璧なスタジオ」を「現実のもの」にしましょう
「レコーディング・スタジオ」なんていう物凄いものを自宅に作るなんて考えたら最初はちょっと気が重い感じがするかもしれません。
でも思い出してください。何もいきなり高価な機材を買い揃える必要はないんです。あなたのスタジオはまずあなたのニーズと現状に合ったものにする・・・だから色々と機材の事などリサーチし今の自分に合ったものを見つけてそれを組み合わせていけばいいのです。
まずは小規模に、身の丈に合う形で始めましょう。そこからはあなた自身の進化に合わせてスタジオも進化させていけばよいのです。
ホーム・スタジオの進化は、あなたの作り出す音楽とともに為されるのですから。
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