ボーカロイドの未来:ボカロプロデューサーの宮川智希氏(L75-3)に聞く

ボーカロイドの未来:ボカロプロデューサーの宮川智希氏(L75-3)に聞く

北米だけでなく、ドイツでもコンサートが開催されるなど、世界で徐々に広がってきているボーカロイド。その中でもプロデューサーとしてL75-3を結成し、【Twilight of Small Planet】などのヒットボカロ曲を世に送ってきたボカロPからのこれからのボカロについて、宮川さんのボカロとの出会いなどを今回はお聴きしました。

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宮川智希のプロフィール

15歳でシンセサイザーの魅力に惹かれDTMを始める。
20歳よりサポートキーボーディストとして大久保伸隆氏(Something Else)を始め多くのステージで活動する傍ら、活動拠点を制作へとシフトする。

その後、音楽制作ユニットL75-3を結成し、同人、商業両面で音楽作家として活動を開始。

2013年より声優原由実氏への楽曲提供を皮切りに、永井朋弥氏(+Plus)楽曲で編曲、映画での劇伴制作、イベント内でのBGM制作と様々な制作の現場に携わる。

同人活動ではVocaloidを用いた楽曲を使用し、“Twilight of Small Planet”がニコニコ動画カテゴリーランキング5位を記録。(Sleepfreaks社の講師プロファイルより)

ボカロについて|出会い、そしてボーカロイドの未来

–宮川さんがボーカロイドを始めたきっかけは何ですか?初音ミクの声の魅力について教えてください。

|宮川氏 ミュージシャン仲間を通じて、初音ミクの楽曲を初めて聴いた際に、その楽曲が純粋に好みのものだったので、そこから自然にボーカロイドについて興味を持ちました。

そして、ネットを通じて多数のクリエーターが、同じ声を用いて作品を発表し合っている状況に、コンテスト的な要素を感じ、創作意欲を刺激されたことがきっかけでボーカロイドを使い始めました。

初音ミクの声については最初は正直抵抗があったのですが、声に合わせて音楽性を変えて見たところ人間の歌とは明らかに違う魅力があるように感じ、ロボットのような拙い歌ならではの表現に可能性を感じました。

–今の段階で、一番好きなボーカロイドの声(キャラ)はどれですか?

|宮川氏 僕自身、ボーカロイドを知ったのは初音ミクというキャラからで、興味を持って使い始めてから

ほかにも幾つかライブラリを増やしましたが、愛着という部分でも初音ミクが一番扱いやすく感じています。

–ボーカロイドは人間の声のどの要素を一番良くまねている(理解している)と思いますか?

|宮川氏 人間の歌声に近づけるという部分では、どれほどエディットを行っているか、使い手次第で変わってきますが、音声の合成エンジンがアップデートするにつれて、エディットを行っていないベタ打ちの状態でも音と音のつながりなどは、徐々に人間らしくなってきているように感じます。

–ボーカロイドのどの要素が人間のヴォーカルとの違いを生み出していますか?

|宮川氏 音楽的な部分で言えば、ブレスが不要だったり、人間では出すことが難しい音域で歌えたりという、身体的な制限がないことによるものが大きな違いかと思います。

あとは、ロボットを連想させられるような少し不自然な発声が、音楽のジャンルによっては人間よりもハマる部分があるように感じています。

–ボーカロイドの機能が将来的向上していくことになると、ボーカロイドが最終的に人間のヴォーカルの代わりになるような時代は来ると思いますか?

|宮川氏 もしその歌声が人間のものと比べても遜色がなかったとしても、シンガーやアーティストのファンは少なからず音楽以外の部分、例えば人間性の部分などに惹かれ好きになるという面があるかと思いますので、完璧な代わりを務めることは難しいと思います。

アイドルとしては可能性があるかもしれませんが。

リミックスについて|大胆な処理が最高のミックス

今回LANDRはSleepfreaks社と共催してリミックスコンテストを開催しております。(詳細、参加はここから)そして宮川氏に今回のリミックスの原曲を提供していただきましたこともあり、宮川氏にリミックスについても少しお時間をいただき聞いてみました。

–なぜリミックスは重要なアートの形なのでしょうか?

|宮川氏 オリジナルとリミックスという比較対象があることが前提での変化という楽しみが、作り手にも聴き手にもあるのではないかと思います。

原型という共通認識があるものに対して、それがどのように変わったのかという点は明確でわかりやすく、完全にオリジナルの楽曲を聴くのとはまた違った楽しみがあるように思います。

–「最高」のミックスはどう「まあまあ」のミックスと違うのでしょうか?

|宮川氏 アレンジしたトラックを整理して、綺麗に聴かせるものがまあまあのミックスだとすると、よりクリエイティブに音像的な面白さや、アレンジをさらに広げてくれるような実験的で聴く人をはっとさせることが出来る大胆な処理を施したものが最高のミックスなのだと思います。

–宮川さんは自分の声で何か音楽作りの実験をしてみたことはありますか?

|宮川氏 L75-3は元々ボーカリストを担当していたパートナーとのユニットですので、彼女の歌で多声コーラスや、カットアップを用いたリズミックなアプローチ、その他にはAutotuneを用いたロボットっぽい加工ボイスなどを実験的に楽曲制作に取り入れたことがあります。

ボカロについて|番外編

LANDRは90%以上の社員が外国人で、たくさんの面白い意見が行き交う現場なのです。その中でソーシャルを担当しているスコットが興味本位にこんな質問を宮川氏に投げかけてみました。

–もし宮川さんがボーカロイドのキャラを作るとしたら、どのようなキャラになりますか?

|宮川氏 キャラクターデザインも含め、より自分好みのかわいいボーカロイドを作ってみたいです。

–ボーカロイドは楽器なのでしょうか?それとも他の何かなのでしょうか?

|宮川氏 言葉を発することができる楽器でもあり、仮歌専用のインスタントなシンガーでもあり、バーチャルアイドルでもあり、用いる人よってそれは様々に解釈をされるのではないかと思います。

–最後に、宮川さんの感じるボーカロイドの定義を教えてください。

|宮川氏 ボーカロイドというものが文化的にここまで発展することが出来た背景として、それぞれ個々のライブラリにキャラクター設定があって初めて成り立ったものだと思っていますので、歌を歌わせることが出来る楽器以上に、キャラクターが存在することが重要なのだと思います。

宮川氏、今回はお時間を頂き誠にありがとうございました。宮川さんはスリープフリークス社で講師もしているので、是非興味のある方はスリープフリークス社のサイトをご覧下さい!(https://sleepfreaks.co.jp/instructor/tomoki_miyakawa)

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