Pixarのベストセラーとなった短編映画にLANDRがどのようにして使われたのか?

Pixarのベストセラーとなった短編映画にLANDRがどのようにして使われたのか?

ダニエル・ローランドは、長年にわたりピクサーにとって最高傑作となった短編映画「パイパー」について語ってくれました。.

パイパーパイパーは、長らく待たれていた「ファインディング・ニモ」の続編「ファインディング・ドリー」が映画館で始まる前に上映される短編アニメです

ファインディング・ドリーは多くの人の目にとまりました。予想をはるかに超えるものでした。そして最高の収益をもたらしたアニメの登場でもありました。そう、ピクサーの歴史の中で最高だったのです。.

観衆の中にはファインディング・ドリーが好きな理由は、パイパーを観ることが出来るからだと言う人すらいます。

パイパー(監督アラン・バリッラーロ)が今年のアカデミー賞短編アニメ部門の有力候補になることは疑いないでしょう。

「バリッラーロが6分の短編を作るのに3年かかったが、そこで使われた最先端の技術はスタジオの未来を示唆するものになった」

Vanity Fair

そして、これがいかにクレイジーなことかおわかりでしょうか?ローランドは、LANDRを使ってパイパーの音楽のレコーディングとミキシングを担当していたのです。.

幸運にも彼が私たちのチームに加わってくれたことをまだ話していないかもしれませんね?ローランドはLANDRの上級オーディオエンジニアです。

私たちは彼に作業の過程について話を聞くことができました。彼は映画音楽に高い関心を持つ方々に向けて、秘密のテクニックを教えてくれましたよ。

LANDR:LANDRを制作のどの過程で使いましたか?またどのような方法で?

ダニエル:私がパイパーの作業に取り組んでいる時はほぼ毎日使っていたよ。基本的にPro Toolsでミックスして書きだしたファイルは、全てLANDRに取り込んだ。

エイドリアン・ブリュー(作曲家)と私は、一日の作業を終える頃になると、新鮮な状態の耳でマスターを聞きたいと思っていたんだ。

私はしばしば監督の所に出来たトラックを送り、試聴してコメントを貰った。LANDRにマスタリングを任せることで、毎回ファイルを送ってもサウンド面は一貫していたので、この工程は大分楽になったね。

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これらの音源は本質的にはOKを貰うためのに送るデモなので、良いサウンドである必要があり、そうでなければ、そのトラックが音響面がよろしくないという誰かの意見でダメになるリスクを負うことになるからね。

LANDR:パイパーを作る過程の中でLANDRが最も役に立ったのは何ですか?

ダニエル:時間の節約だね!私が次のプロジェクトに関わっている間にLANDRがバックグランドでマスタリングしてくれたのは素晴らしかった。私はミックスを終えたらそのトラックをもう一度最初から通して聞くなんていうことはしないから、こういった時にはLANDRは信頼に足るし、もし自分で即席のマスタリングをしても大抵は似たような結果になるだろう。

私はミックスをして、書き出して、LANDRに突っ込んだら次に進むのさ。

パイパーの音楽で言えば、一番良かったのは何日(時には何ヶ月)にも及んで制作日がバラバラの音楽が、音響的にちゃんと混ざり合うところだ。私がスタジオに出向いて、行列を作っている楽曲を一つの音楽トラックにまとめあげる時、ちゃんと混ざり合うようにいじくる必要はほとんどなかったね。

LANDR:もしパイパーに台詞がなかったら、音楽を流すことは何の役割を果たしますか?

ダニエル:エイドリアン・ブリューが音楽を書く。私はコンピューターやDAWといった自分にとっての楽器を使って、録音し、形にして、ミックスする。

台詞が無い場合、音楽と効果音とアニメーションが完璧なコンビネーションでなければならない。最初の20分間まったく台詞が無い「ウォーリー」のような映画を見て貰えばわかると思うが、ピクサーはこういうのが得意だ。そして私の意見としてはそういった映画が傑作なんだ。

例えそれが短い映画でもあっても、台詞が無いのはパイパーの音楽が産まれた要因の一つだ。そして映画音楽1曲につき最低3バージョンのスコアが必要になる理由でもある。

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結局、指揮者のジャック・モナコが私たちが作ったデモを映画に合うようにすることを手助けてくれた。私たちで録音したギターやシンセが、完成バージョンのフィルムにも残っている。その他はSkywalker Soundで録音したオーケストラなんだけどね。

LANDR:メディアはパイパーについて”感動的に満足する”と評しています。これについて音楽と効果音がどんな役割を果たしたと考えますか?

ダニエル:映画を音楽や効果音無しで見てみて、どうしたら感動できるのか教えて欲しいね。

とはいっても悪く捉えないでね。私は無声映画が好きなんだよ!だけど、映画を見る時はイマドキの観衆として音楽や効果音にも期待してしまうよね。

例え私たちが音楽が流れていることに気づかなくても、音楽は私たちを引き込むように流れるべきだ(それが一番良い形だと思うよ!)。

LANDR:鳥の鳴き声を作ったりしたことはありますか?それはどのように作りましたか?

ダニエル:レン・クライスという素晴らしいエンジニアが効果音や他の音を担当している。

私が彼の名前を最初に聞いたのは、最新のナイン・インチ・ネイルズのアルバムだった。トレント・レズナーとアッティカス・ロスは、デビット・フィンチャーの映画に曲を提供していて、レンがサウンド・デザインを行った。最終的には彼に知り合えて良かったね。

何千もの鳥の効果音を作るプロジェクトの最初では、試せることは何でもした。きしむような音の出る犬のおもちゃを何十個も買ったり、発泡スチロールをガラスやプラスチックでこすったり、小さなバイオリンの弓でナットの裏を擦ったりもした。

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そのプロジェクトでは、音程を高くした犬の声だったり、私の声やエイドリアンの子どもの声を録音したものもあったよ。私が使えそうだとピックアップした何千もの素材から作ったよ。それが映画の中でどれだけ使われるか見当もつかなかったけどね!

LANDR:水の音についてはどうですか?

ダニエル:あるシーンで、シンクの中やスイミングプールや浴槽といった水中の音を録音する良い機会があった。スタジオではパイパーの水中シーンで使うためにシンセの打ち込みも行ったけど、エイドリアンがギターで作ったループも使った。何ヶ月か後になって、ピクサーで私が音楽を防水Bluetoothスピーカーから再生して、水中のマイクで録音した。

実際、バリッラーロ監督は、ピクサーのプールで波風の音を作るために水を流したり、スピーカーをネットに入れて動かしたりもして、そのうちにいくつかを気に入ってくれた。楽しい素材だったね。

私のアドバイスは時間が許すなら非現実的であれ、なんだけど、そんなことはいつでもあるわけじゃないよね。日常生活でも音楽でも同じ事だ。

後に、私は音楽を何オクターブか上げて再生し、アルカセルツァーの発泡する錠剤を浴槽に落としてから録音した。音程を元に戻して聞いてみると、その音楽は正しい音程で再生されているけど、泡の音はかなりビッグだ。これは現実にはあり得ない音だけど楽しいよね!

LANDR: 他にアニメーション映画の音楽に関心がある方に向けたテクニックはありますか?

ダニエル:私には業界最高レベルの作曲をしている友達がいるので、彼らが私にくれたアドバイスを伝えよう(そして私自身が首を突っ込んだ経験から真実に足るといえるものだ)。

まず最初に、映画の仕事をする時は、音楽レーベルと仕事する時よりもさらに厳しい納期が頻繁にやってくる。

そこでは、迅速に動き素早い決定をくだすことが求められる。

手がける制作物についても、大抵の場合自分でコントロールができる範囲は(かなり)すくない。そのため”好きなことなら何でもやる”タイプに慣れてしまった人は、ちょっと頭を切り換える必要があるだろう。

音楽は映像を引き立てるべきもので、監督は最終的な決定権者だ。自分が作った音楽をすごく気に入ることがあるかもしれないが、一歩引いてより大きな視点から見る必要がある。

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自分が船の艦長ではない事を受け入れたら、常にプロジェクトの進行について隅々まで目を光らせることもないだろう。

だからこそ、自分が本当に信念を持ってやっている事への戦いを入念に選ぶ。重要では無い物事からは立ち去ろう。折り合いを付けて見直し、次へ進むのさ。これは、私がこの仕事から学ぶことができた人生の教訓ともいえるね!

LANDR: LANDRが世界中のアニメや映画で使われるようになるか、どう思いますか?

ダニエル:業界の人間と話した感じでは、今はまだほんのちょっとの人が使っているようだね。だけど、LANDRを体験してみたらより多くの人が使うようになると思うよ。繰り返しになるけど、短い納期にもかかわらず良い音質の音楽を求められるからね。

LANDRはそういった注文に応えるサービスに思えるよ。

Yoshitaka Koyasu

Koyasは、アーティスト/プロデューサー/レーベルオーナー/DJなど幅広い顔を持ち、Ableton認定トレーナーとして東京のAbletonユーザー・グループAbleton Meetup Tokyの原動力として活躍している。LANDRのコンテンツ・アダプター。

@Yoshitaka Koyasu

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