避けるべき10つのよくあるミキシングの間違え

避けるべき10つのよくあるミキシングの間違え

私は最近UAudio.comの中のダン・ケラー(Dan Keller)とピート・ドエル(Pete Doell)が書いた『最もよくあるミキシングの間違い』という記事を読みました。一つ言いたいことは、間違えだ、間違えだ、間違えだということです。

冗談はさておき、実際のところダンとピートの記事は凄く良く書かれていて、経験の浅いエンジニアがやりがちなたくさんの技術的なエラーなどをしっかり指摘していました。この記事のリンクは、ここから読んでください。

私の視点から見た自分を含めたエンジニア達が陥りやすいもっともよくあるミキシングの間違えをここに書いてみました。

はっきり言って、この記事は私にとっても非常に役立ちます。個人的にまた何回か読むべきとも思ってます。

1. しっかりとした方向性を持っていない

ミキシングは非常に主観的な作業です。「良い」ミキシングができるようになるためには、何をすれば良いミキシングとなるのかをまず定めなければいけません。『10つのよくあるミキシングの間違え』の最初を飾るのは、ビジョンも持たずにやみくもにミキシングの作業をするです。

目標も定めず、どんな音楽を聞きたいのかも分からないようでは、暗闇に弾丸を撃ち込んでいるのと変わりません。1発か2発くらいは的をかすめるかもしれませんが、結局ひどい結果に終わるでしょう。

2. 質より量を考えてしまっている

私が初めの頃によく間違えたのが、「低域(ローエンド)をどのくらい鳴らすか」と考えてしまうことだ。本当のところ「低域を正しく鳴らすにはどうすればよいか」を考えなければならないのに。

もし低域にフォーカス感を与える必要があるなら、比率(プロポーション)ではなくフォーカスを目指して作業を進めなければいけません。実際、私は「量」に関するアイデアが重要な場面ではこれをピートのようなマスタリングエンジニアに簡単に任せることができます (それが癖になっているわけではないのですが)。量が問題となるのは、現実には多くの楽器の間の関係性を考える場合のみだけです。そして実際にはこれは質的な気遣いをしています。つまり、『これらのアイデアを楽器たちがそれぞれサポートし合ってくれているだろうか』、『お互いに重要なパートが輝くようにしてくれるだろうか』、と。

3. 雰囲気を構築する十分な時間を費やしていない

アンビエンスはそれぞれのミキシングの背景となります。部屋に残る響きが録音されたのであれ、合成されて作られた残響(リバーブ)であれ(またはその両方であれ)、このアンビエンスはサウンドがどのようなふくらみを持つか、またミキシングがどれほほど感情に訴えかけるだけの質を持つかに、大きく影響します。残響/遅延(リバーブ/ディレイ)は録音のトーンを強化する素晴らしいツールです。これを正しく設定できれば、洗練、窮屈や弛緩といったあらゆるトーンを強化できるでしょう (#1参照)。

残響をその場その場で適当に設定するなら、連続性のないミキシングとなります。気を付けてほしいのですが、どれかに残響を与えずにドライのまま放っておくのもまた、強力な創造的なツールです。ここは慎重に!

4. エフェクトに頼りすぎ

ミキシングは繊細な関係性を作り出すゲームのようなものです。

素人ほど「スペシャル」なミキシングをしてやろうとばかりあらゆるトラックにEQやコンプレッションで手を加えてしまいます。

経験を積んでくると、できるだけ手を加えないようにして最高のミキシングを作り出し、加える効果の度合いを減らそうとします。何か創造的な決断をして実行する場合を別として、原音にできる限り忠実であろうとします。(#1参照)。

5. 視点を切り替えることなくミキシングし続けている

もしあなたがスピーカーセット一つだけを使い場所を定めてミキシングを一気に進めるなら、あなたは限られた一部しか把握できないでしょう。ちゃちなコンピューター用スピーカーとかヘッドフォンなどいろいろ取り替えてみたり、ミキシングを聞く位置を変えたりして作業をするなら、より範囲の広い視点を得ることができます。しっかりと休憩時間を取って耳をリフレッシュさせるとか、続きの作業を明日に延ばすとかすれば、作ったミックスを一夜置いて次の日に再度聴いてみるとかすれが、さらに大きな視点を得ることができます。

6. 型にはまったやり方に頼りすぎている

ジャンルを限ってしまうと型にはまりがちになります。これは罠です。前向きの考えを持つアーティストやプロデューサーはしきたりを激しく嫌うものです。だから、経験の浅いクライアントはどこかで耳にしたありきたりのものを望むかもしれないが、皆が同じくそう望むわけではありません。

私に啓示を与えてくれたのは、とても有名なジャズピアニストでした。それは、私が彼からトリオのミキシングの依頼を受けた時でした。今でも自慢に思うのだが、私はそれまでのジャズのミキシングに比べドラムによりパンチを与え音が前に出るようにしました。彼はこのミキシング、とりわけドラムをとても気に入ってくれました。それ以来、彼は従来風のジャズ・ミックスを望まなくなったってことがありました (これは理屈に合っているんです。そのころ私はそれほどジャズを手掛けていなかったのだ)。

肝心なのは、それ以来ずっと私たちは一緒に仕事をしてきたという点です。私は自分が感じた通りに録音を処理し、昔ながらの方法には従いませんでした。その時々を十分に楽しんだのです。

7. 型にはまったやり方に沿っていない

『型にはまるな』とは言いましたが、『こうするにはちゃんと理由があるのだ』、と人は言うでしょう。それはつまり、音楽のスタイルも文化の一部であり、その影響から逃れられないと言うことです。でも聴衆の期待するところを認めようともしないとしたら、実に失礼千万というべきでしょう。

「いろいろな要素をどうミキシングするかなど知る必要はない。ミキシングをどうするかだけを知ればよいのだ」と何度か聞かされたことがあります。これははっきりと間違っているし、そんな考え方では成功はおぼつかないでしょう。

あるジャンルのサウンドにはその音楽の文化と歴史が刻まれているのだから、重んじなければいけません。もしあなたが従来からの決まり事を拒否しようとするなら、末端の聴衆がそれでどんな影響を受けるかによく気を付けることです。#6と#7は、方向性を持つことを説いた#1の発展版となっています。

8. 状況を忘れている

シングルのミキシングは大切だ。それとは別に、EP盤やLP盤のミキシングもあります。ある曲がとてもいい曲だからと言っても、アルバムに収めたときにその全体のストーリーの中でその良さが引き立つとは限りません。

EP/LPはそれぞれが独特の世界を持った楽曲の集まりだが、次々と並ぶ曲どうしには音としてのつながりが感じられます。少なくとも、それが昔からの決まり事なのだからです。

9. 自動化しすぎて怠け者になってしまっている

一度決めたら後はお任せ、これはミュージシャンたちが各々のダイナミックな活動にきわめて忠実に作り上げた作品でのみうまくいくやり方です。その場合でもまだ決まりを守らないで済ますこともできるのですが。

音源を取り扱うことと、ミキシングをすることとは決して同じではありません。異なるのは自動化という点です。さあやってみよう!

10. しっかり決められた方向性を持っていない

真面目な話、ここに間違いの原因のすべてがあります。ミキシングとは物作りの進んだ形です。物作りには人の意志が働いています。したがって、ミキシングにも人の意志が必要なのです。

これは何も、『音楽を作りながら方向性を決めることはできない』と言っているわけではなく、あなたは音楽制作のある時点で「いよいよ大詰めだ、どうまとめようか」と自分に言い聞かせなければいけないということです。

ひとたび方向性が定まれば、すべての工程がずっと早く簡単に進みます。だから、ノートパッドを手に、デモと編集前のトラックを聞きながら、その楽曲についてのアイデアを書き記してください。深呼吸し、ゲームの計画を立てたなら、ミキシングの開始です。

原文:http://theproaudiofiles.com/mixing-mixtakes/?utm_content=buffer9d31c&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer
編集:Matthew Weiss
翻訳:出山剛

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